2011年3月30日水曜日

韓国の民主主義と非営利団体

こんにちは。インターンの市川哲也です。

昨日も支援企業の方々とのミーティングで「日本の民主主義」という話が出ましたが、先月大学の研修でソウルの延世大学に行き、韓国の政治文化や参加型民主主義について考えることがあったので書きたいと思います。

韓国人の政治への関心は(民主化が遅かったこともあり)一般に高いようですが、その背景には高度なインターネットの活用と非営利団体を通じた市民の参加があります。

そもそも韓国のITには目を見張るものがあり、T-moneyのような電子マネーの普及は日本以上ですし、大学ではタッチパネルを利用したメディアセンターの席の予約・各国の新聞閲覧サービスのほか、日米中をはじめ各国のテレビを視聴できるラウンジなど、本当に驚きました。しかも、そういった設備が見掛け倒しではなく、実際に十分活用され学生が熱心に勉強しているわけですから、自らを省みても、日本はどうだろうかと焦りすら覚えました。

インターネットの活用も、こうしたITの発達に必然的に伴うものです。しかし、そこに市民の政治参加という要素が加わることで、非常に興味深い状況になっていると感じます。木宮正史氏の著書『韓国―民主化と経済発展のダイナミズム』(ちくま新書)によれば、「韓国の場合には、社会的要素を政治システムに結びつける経路が組織化されず、非常に流動的かつ無定形であるために、インターネットを利用した新たな経路が注目され重要な意味を持ちやすい」とのことですが、02年の大統領選挙がそうであったように、非営利の団体がインターネットを利用して国民の参加を呼びかけ、政治的パワーにつなげる動きは既に顕在化しているようです。

これは、何も特定の政党や候補者を持ち上げようというのではなく、ある時は非営利組織主催の候補者討論会を放送し国民に判断材料を提供する、或いはネット上で市民参加の議論を行うというように、純粋に参加型の民主主義を実現しようという努力もなされているということですので、その点は注目に値します。

延世大学の講義で、T. J. Lah教授は非営利団体の役割についてBarking(opposition to socially-ill behaviors)とWorking(participate in government's decision making)ということを仰っていましたが、強いて言えば前者はProPublica、後者は言論NPOというイメージでしょうか?

一方で、前述の木宮氏はこうした団体の活動が影響力をもつにつれ政治権力に包摂される危険があると指摘しています。特に韓国では「社会における指導層、名望家中心」の活動が政治権力からの自律性を維持できなくなり、緊張関係を失った例があるという話には考えさせられます。

▲ソウル・光化門の政府中央庁舎と太極旗(2月撮影)