2010年11月18日木曜日

最近感じたこと

どうも、東京大学公共政策大学院一年の藤野です。今回は私が担当させて頂きます。


今、言論NPOでは、エクセレントNPOのブックレットを作成しており、出版までの最終段階に至っています。もうすぐ、アマゾンなどでお目にかかれるのでお楽しみに。

さて、今日はここに、普段の大学院のゼミとこのブックレットを読んでいて感じたことを書きたいと思います。

まず、ゼミに関してなのですが、私は今、大学院で現代行政という政策評価に関わるゼミ形式の授業を履修しています。この授業は各省庁の具体的政策に関して、問題点がないか、ある場合はどんな解決策があるかを行政学の観点を中心に議論をしています。担当の教授は外交などの一部の分野を除いて、多くの政策評価に参加しているので各省の政策を具体的に考えることができます。

その中で、先日、自然再生事業という政策を扱いました。これは、簡単にいうと釧路湿原などの失われた自然を、国費を使って人工的に元の形に積極的に再生させようという事業で、事業主体は環境省です。

 じつは、この政策「国費を投入して再生するなんてことが必要か」というそもそも論的な問題もあるのですが、今回話題にしたいのはここでのNPOと行政の関わり方です。この事業は自然再生協議会という協議会を中心に政策を回していくのですが、この協議会には、市民、行政、NPO、学者等の多様な主体が参加することになっています。市民の自発的な力で協議会を設立し、自然再生事業を推進していこうというのがこの事業の趣旨であり、法の趣旨だからです。しかし、実態は政策設立後、市民が自発的に自然再生協議会を設立した事例は総務省の行政評価局の資料によれば、1件という状況です。協議会の成立のほとんどは地方自治体の後押しによってできている状況にあります。加えて、誰かがイニシアティブを持って協議会を設立しようとしても、参加者を公募して構成員がある程度集まるまで、実体的には1年以上かかってしまうことがよくあります。

このような現状をこのブログを見ている皆さんはどう思うでしょうか。私が思ったのは、日本の市民はこういった自然再生活動に興味がないのか。または、そういう情報に触れる機会がないのではないかということでした。なので、こういう現状の下では自然再生政策をすぐに実施したい地方自治体としては、彼らが知っているNPO等に声をかけて協議会を立ち上げて、事業を実施するのは仕方がないのではないかとも思います。実際、この政策は埼玉県のくぬぎの森(かつて、産業廃棄物処理場が多く稼働し、あるテレビ局のダイオキシン報道で社会問題となり全国的に一時的に非常に有名になってしまった所です)などである程度の実績があるものもあります。ただ、こうしたいびつな形はいつまでも続いてよくはないと思います。

 このような時だからこそ、市民の側を活性化させることが必要なのではないでしょうか。そのためのツールの一つが、言論NPOなのではないかと改めて認識しました。まさに、自分たちのやっている活動の一つが社会の中で重要な位置を占めていることが大学院のゼミの中で確認できたできごとでした。

 このような、協議会方式を採用する法律は今後増える可能性があると多いと思います。私が知っている中では景観法がこのタイプです。このような法律では市民が自ら動くことが求められます。動かなければ、ただの法律が用意した仕組み・制度は「箱」に過ぎません。むしろ、このような法律という「箱」を余計に作ってしまうためにお金や人の動きが見えにくくなってしまう可能性があります。

 行政が、市民に頼ろうと、頼らざろうえないという姿勢を見せているいまだからこそ、市民が強くなって自分たちで社会を作るチャンスだと思いますが、自分たちが頑張らなければむしろ、行政の無駄(無駄な立法の乱発)を招くとも思います。そのため、ゼミに参加して、行政の側からだけではなく市民の側からも社会を作っていく活動が必要なのではないかということを実感した経験でした。